The Smashing Pumpkins Adore
前作Mellon Collie and the Infinite Sadnessでは凄腕プロデューサーflood(U2のアルバムのプロデュースなどもしている人です。)を起用して爆発的なセールスを記録し、もはや全米を代表するロックバンドとなってしまった観のあるThe Smashing Pumpkinsの第4作。今回は全曲ヴォーカルのBilly Corganによるセルフ・プロデュースなのだけれど、いやはや、こういう方向に進むとは思いもよらなかった。第1曲は「げっ、ヴェルベッツ!!」だし、1曲おいて第3曲では「うわっ、ニュー・オーダー!!」ってな感じで進行していき、結局のところ1960年代及びその影響の濃い1980年代への回帰を思わせる内容になっているのである。前作までに見られたいわゆる「グランジ・ロック」色は影も形もない。実のところ、この人達こそ「グランジ」系の代表的なバンドだったのだから、本作におけるこの変貌はそれこそ「グランジの終焉」を意味しているのかも知れない。Nirvanaも無くなってしまった訳だしね。実はまだPearl Jamの新作を聴いていないのであえて断言は避けるけれど、いよいよ1990年代も間もなく終わりかな、という感を強くさせられる。全体的な印象からいうと、静かで、ソフトで、それでいてどことなく影を感じさせるアルバムである。リズム・トラックがほとんど「打ち込み」みたいに聞こえ、その辺の素っ気なさが最大の特徴とも言えるだろう。ギターの音量もすごく押さえているし、ヴォーカルも全然シャウトしない。アメリカン・ロックの新しい形を示すマイルストーン的な作品なのかも知れないし、ひょっとすると最初の方で述べたような、単なる1960-1980年代への回帰に過ぎないのかも知れないけれど、その判断は今のところ控えておきたい。そういうことは時間がたてば自然に分かってくる事なのだから。(1998/06/06)