Oliver Stone監督作品 Alexander 2005.07(2004)
時は紀元前350年-300年頃、世界統一を企て33歳でこの世を去ったギリシャの王アレキサンダー(Alexander。Colin Farrellが演じる。)の生涯を描く歴史ドラマ、ということになる。教科書にも載っている歴史上の事実(本当の事実ではありませんよ。)だけれど一応書いておくと、マケドニア王フィリッポス(英語だとPhilip。なんか間抜けな感じがするのだけど、それは余りにも全世界のフィリップさんに失礼かも…、というか明らかに失礼。Val Kilmerが演じる。)とオリンピアス(同じくOlympias。Angelina Jolieが演じる。との間に生を受けたアレキサンダーは父の暗殺による死によって20歳で王位につく。以後、西アジアからインドまでという東征を企てそれに結局は失敗。失意のうちにこの世を去るまでを描く。
さてさて、アレキサンダーが偉大な王にして伝説的な英雄、というよりは割合等身大の人物として描かれている辺りがこの作品の面白さだろう。台詞回しは勿論、髪型などもその辺の若者とさほど変わらない。もう一点、これは史実に沿うのか分からないところもあるのだが、アレキサンダーが各地を征服していくプロセスにおいて、現地住民やその文化を尊重した、というという描き方も取り敢えずは時宜にかなうものと思う。それでもなお、結局は征服主義、覇権主義、あるいは今日の言葉に置き換えれば要するに植民地主義じゃないか、という最後のプトレマイオス(Ptolemy。言わずと知れた名優Anthony Hopkinsが演じる。相変わらず見事すぎ。)による述懐も誠に的を射ているし映画全体のバランスをうまくとっている。
さらにはまた、古代ギリシャでは実際に同性愛は異性愛以上に価値のあるものと考えられていたところもあるので、それを直接的に表現する場面が多々登場するのだけれど、これもまたある意味画期的なことなのではないか、と思う。これまでのハリウッド映画ではどちらかというとそういうことは仄めかされるに留まっていたからである。こういう辺り、さすがに一筋縄ではいかない作品を多々撮ってきたOliver Stoneだな、ということを感じさせる。まあ、今日の映画界で圧倒的な存在感を示す女優Angelina Jolieによるオリンピアスがどう考えても主役を喰ってしまっている、というところもあるのだがその辺はご愛嬌だろう。
勿論、今日のハリウッド映画が到達したCG技術による古代ギリシャ辺りからバビロン、インド辺りまでの情景作りや、膨大な数のエキストラを使った戦闘シーンも圧巻だし、衣装から細かい装飾品に至るまで、恐らくは時代考証をきちんとやって丹念に作り上げた職人芸的美術も大変に素晴らしい。ギリシャ出身のVangelisを音楽担当に起用した辺りもなかなかに洒落ている。幾らかかったのか分からないのだけれど、これはこれで見事なプロジェクトなのであって、世の中の意外な低評価には関係なく一応傑作だと思うのである。以上。(2005/12/03)