Theo Angelopoulos監督作品 『永遠と一日』
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ギリシャの名匠Theo Angelopoulosの最新作(ギリシャ語表記が出来ないので、エンドロールでも使われていたフランス語表記を用いた。)。本作は1998年度カンヌ映画祭パルム・ドオルを受賞した。確かに大変良く出来た作品で、個人的にはAngelopoulos氏のこれまでの作品の集大成とも言えるのではないかと思う。この人の持ち味はその語り口にあると思うのだけれど、不治の病で余命幾ばくもなく、恐らくは自ら命を絶つこと(「旅に出る」という表現が使われている。)を決意した詩人・アレクサンドレを主人公に据え、その最後の一日の出来事に、彼の身に起きた過去の幾つかの出来事をフラッシュバックというような安易とも言えるやり方ではなく、「映画における意識の流れの叙述」とでも言うべき彼独特の手法を用いて織り交ぜつつ、現代ギリシャ及びその周辺国情勢についての言及をも含むような、一大叙事詩に仕上げている。前作『ユリシーズの瞳』(ギリシャ語的には「オデュッセウス」とすべきではないかと思うのだけれど。)のようなやや大げさな語り口ではなく、あくまでも一詩人の、亡き妻への追憶、ひょんなことから出くわしたアルバニア系難民の少年との心の触れあい(靴磨きならぬ「ウインドウ磨き」なんていう仕事があるんですね。)、やはり死期が近づいている母への思いを綴る、という極めて私的な語りに終始したことで、かえって作品としての奥行きを深めているのではないかと思う。そう。極めて深い作品なのである。主演はBruno
Ganz。この人は基本的にドイツ語圏の人だと思うのだけれど(ドイツ人かな?)、その妻・アンナを演じる女優もフランス人で、まあ、誠に国際的な配役なのである。字幕担当は勿論池澤夏樹氏。ギリシャ語の分かる日本人は、この人しかいないのかも知れない。そんなことはないと思うのだけれど、Angelopoulos作品とは切っても切れない関係にある人であることは間違いないだろう。(1999/05/08)