björk Homogenic
アイスランドが生んだスーパー・ヴォーカリスト、björkのソロ第3作である。今から見れば静かなアルバムとすら言えるかも知れない第1作から、ややハウス色の濃くなった第2作を経て、ここではさらに強烈にビートを打ち出す方向に変化を遂げた。ヴォーカリゼーションは相変わらず素晴らしい。これだけのエモーションを表現出来る歌い手はそうそう出現するものではなく、今日では希有の存在だと考えるが如何だろう?
最も印象に残るのはやはり先行シングルとして出ていた"joga"である。ストリングス・打ち込みのリズムトラック・ヴォーカルが対位法的と言ってもいい方法で絡み合う。今回はこういう、例えば前作における"Hyper-ballad"や"Isobel"のような名曲に用いられた手法は他の楽曲では幾分なりを潜めている。その辺がちょっと残念ではあるけれど、これまでに出た3作品の漸進的な変化を辿ってみれば分かる通り、おそらくこの人は同じ方法をだらだらと反復し続ける積もりはないのだろうし、ひょっとすると聞き手側にも聞く耳を変化させる努力が要請されているのかも知れない。聞き込むうちに、今は見えていない部分がだんだんと見えてくるのだと思う。第1作、第2作も聞く度に発見のある奥の深いアルバムであった訳だ。じっくりと聞き込みたいと思う。全身全霊を用いて。
ちなみに「björk」の真ん中のöはウームラオトである。アイスランド語のoウームラオトがどう発音されるのかよく知らないが、ドイチュ語に倣うなら口の形を[o]にして[e]を発音することになる訳で、そうすると日本で一般的に行われているカタカナ表記「ビョーク」というよりは「ビェーク」に近くなるのではないかと思う。「ゲーテ」と同じである。こちらの発音も難しい。以上蛇足ながら。(1997/10/07)