Takeshi Kitano監督作品 Brother
ご存じTakeshi Kitano監督による日英合作ヴァイオレンス映画である。Joe Hisaishiによる音楽、Katsumi Yanagijimaによる映像、そしてKitano監督自身によるメリハリの利いた演出と無駄のない編集によって、ヤクザ映画としては異彩を放つと同時にまた極めて質の高い作品に仕上がっている。

ただ、やや気になったのはこの作品が描こうとしているのが日本から米国に逃亡したBeat Takeshi演じるところのヤクザ・Yamamotoと、Omar Eppsが演じるアフリカ系アメリカ人・Dennyとの間に芽生える人種や国境を超えた心の交流(笑ってはいけない。本当にそれが描かれているのだ。あくまでもKitano流にではあるけれど・・・。)なのだと思うのだが、Yamamotoの舎弟を演じるSusumu Terajima、Ren Osugi、Masaya Katoの存在感が強過ぎて(この3人は誠に素晴らしい演技を見せている。これが本作品最大の収穫かも知れない。ちなみに、Yamamotoの腹違いの弟を演じるClaude MakiはEpps以上に存在感が稀薄で、これはこの作品の小さからぬ瑕疵となっている。)、どうも本題の掘り下げがやや稀薄になっている点。このこと、即ちこの作品のメイン・モティーフが上記の通りであろうことは、映画の始めと終わりがこの二人の出会いと別れを描いていることからほぼ断定して良い事柄なのだけれど、どうも登場人物を増やし過ぎ、暴力シーンを数多く入れ過ぎて肝心の部分がきっちり描けなかった、という印象が否めなかった。

とは言え、兎に角Beat Takeshiがカッコ良い。ここ20年来テレヴィその他でこの人の立ち居振る舞いを見続けてきたけれど、歳を数える毎にどんどんカッコ良くなっていくのは不思議でさえある。ちなみに、本作品の衣装は私も長年愛用しているYohji Yamamotoが担当しているのだが、Beat Takeshiを含めた登場人物達がそれを見事に着こなす様は、それだけでも一見の価値があるように思う。

そんなところで。個人的には決して悪い作品ではないと思うのだが、さりとて余り深い人間洞察その他が感じられないこの作品についての論評は短めに終えることにする。(2001/03/03)