Eric Bress & J. Mackye Gruber監督作品 The Butterfly Effect
一部で物凄く高い評価を得ていたので騙されたと思って鑑賞。でもって、これは確かに途轍もない傑作というか、映画というのは本来こうあるべきではないかとさえ思えるほどの作品なのだと思った次第。まずは騙されたと思ってご覧下さい。
タイトルはカオス理論を説明するためにEdward Lorenzという気象学者が作った有名な一節が含意する事柄を指す。例の、「ブラジルでの蝶の羽の羽ばたきがテキサスでトルネードを起こすだろうか?(オリジナルは Does the Flap of a Butterfly's Wings in Brazil Set Off a Tornado in Texas? )」、というもの(他にも様々なヴァリエーションあり。)。とあることから過去に意識を飛ばすことが出来るようになった若い男(Ashton Kutcher)が、それを応用すれば歴史を変化させることが出来ることに気付き(要するに過去の出来事にちょっとした変化を加えるとそれから先が一変してしまう、という訳。)、幼馴染(Amy Smart)の過酷な運命を変更させようとして起きる様々な出来事を描く。
まあ、恐ろしく良く出来た筋書き及び脚本で、2時間くらいの結構長い映画なのだが瞬きする余裕もなかった位。演出・編集も実に巧みで、共同監督をしている二人はこれが長編デビュウだけれど、大変な力量の持ち主だと思う。次回作も期待したいところだが、これ以上のものを果たして作りうるのかどうか、とさえ感じた程の出来映えなのである。主人公の亡き父が語る、「人は神になってはいけない」云々という主題もなかなかにディープなもので、この傑作に更なる味わいを加えている。
ちなみに、この映画のエンディングは既に何度も繰り返し様々な映画で使われてきたもの。オリジナルは『天国から来たチャンピオン』(1978。原題はHeaven Can Wait。1941年にこれのそのまたオリジナルHere Comes Mr. Jordanが作られているが多分未見。)で、その後『時をかける少女』(1983。大林宣彦監督作品)、『東京上空いらっしゃいませ』(1990。相米慎二監督作品)などにも引用されている。いずれも傑作なので観ておきましょう。以上。(2005/05/18)