Robert Altman監督作品 Cookie's Fortune
話題の映画Magnoliaとどっちを先に見るかちと迷ったのだけれど、やはり、名匠R.Altman監督に敬意を表してこちらにした。どうでも良いことかも知れないが、実は本作の中ではmagnoliaという単語が一度発話されている。magnoliaとは「木蓮」の事。未見の方は是非是非注意深く聴いてみて下さい。
さて、本題へ。所謂「群像劇」乃至は「群衆劇」を得意とするこの監督、今回も登場人物は山のように多いし、主な舞台は五つ位あって、更にはプロットも何本かが錯綜する。とは言え、さほど複雑という訳ではない。いやいや、この監督の作品としては寧ろ単純な部類なのではないだろうか。すなわち、殆んど全ての場面がCookieの自殺を巡る一連の物語に関連付けられていて、各場面場面の関係や、そこに出来する人物間の関係も、非常にすっきりと、分かり易く描かれている(それとは対照的に、最後の方に出てくる親族関係を巡る会話は非常に分かり難い。明らかに意図的である。)。同監督のここ10年位の作品群ではずば抜けて出来の良い作品であったShort Cutsなどに比べれば、「取るに足らない」レヴェル、とすら言える。確かに、これだけの数の登場人物と舞台を使いこなすのは大変な事であって、監督や編集者の力量はとんでもないものだとは思うのだけれど、かのAltmanだからね。この位は当たり前。個人的にはもっと複雑なものが観たい、と思う。それこそ、「バロック」的な。そもそも、この作品のテーマは結局の所「因果応報」などという古典的かつ平凡極まりないもの、もっとヒネリを利かせて欲しかった。
尚、アメリカ南部という舞台と、濡れ衣を着せられたアフリカ系男性とそれをサポートする白人女性という組合せは、Volker Schlondorff監督(前から二つ目迄のoはウームラオト。)のA GATHERING OF OLD MENに極めて似ている。但し、あの作品ではHolly Hunter演じる大学生(最近思うのだけれど、「女子大生」というのは差別語なのではなかろうか?何故なら、「男子大生」という言葉が存在しないから。そう考えると、「女子高生」もまずい。確かに、「男子高生」という語はないよね。同じく、「人妻」というのも極めて差別的。理由は同じ。ついでに言うと、「パラサイト・シングル」というのも差別語乃至は侮蔑語。早く止めさせないとえらい事になる。)が正当防衛とはいえ殺人を犯したアフリカ系男性を守る、というものではあったけれど。
蛇足。Mississippi州Holly Springs市が舞台となっているのだけれど、綴りをチェックすべく辞書(『小学館プログレッシヴ英和中辞典』)を引いたところ(こりゃ、どう考えても普通は書けません。しかし、何て規則正しい綴りなんだろう。美しい。一度覚えたら忘れない。)、同州はその異名をMagnolia Stateというらしい。そうだったのか。成る程。「シンクロニシティ」というやつですな。
もう一つオマケ。劇中に「保安官(sheriff)」が沢山出てくるのだけれど、「警官(police)」とどう違うのかが無性に気になったのでこれまた辞書を引いた。すると、「米国の郡などで法の施行権限を持つ最高官吏」とある。随分ズレている。一応現代の話なので、ローカル・ルールがある、ということになるんだろうか?米国の警察機構が良く分からなくなってしまったよ。とほほ。(2000/03/10)