Alan Parker監督作品 The Life of David Gale
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巨匠Alan Parkerを監督に起用、Kevin SpaceyとKate Winsletという当代きっての名優を主役に配した傑作である。現時点でYahoo!の映画サイトにおける評論家評を見ると「C-」、一般評を見ると「A-」という風に見事にその反応が分かれているのだが、この理由は単に政治的なものだろう。何しろこの映画、基本的に死刑廃止論を一見するところでは肯定的に扱っているかのように見えるわけで、下手に高い評価をしてしまうと、「おまえは死刑廃止論者か。つまりは人権派、あるいはリベラルだな。軟弱ものが!」などというおバカな人々の罵声を食らいかねないことに対する警戒心からなのではないかと勝手に邪推する。まあ、よくみれば、死刑廃止論を肯定も否定もしていないのだけれど…。
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取り敢えず簡単な要約を。死刑廃止論者である大学教授(とある理由で休職中)の主人公・David Gale(Kevin Spacey)は、レイプ殺人の容疑で起訴されて死刑が確定。処刑が3日後に迫った状況で、ある女性ジャーナリスト(Kate Winslet)が単独インタヴュウを行なうことを許可される。刑務所の面談室で、冤罪を主張するDavid Galeによって「レイプ殺人事件」に至るまでのことの次第がつらつらと語られ、やがて処刑当日に。果たして真相はいかに…。というもの。
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緊迫感に溢れた誠に良く出来た脚本、主役二人をはじめ脇役に至るまでの実に見事な演技と演出。これはどう見てもかなり優れた作品である。さてさて、ここで本作品が肯定も否定もしない形であるとは言え少なくとも一石を投じた「死刑廃止論」についてちょっとだけ述べておくと、その論点は多々あるのだろうけれどこの映画ではその中でも概ね三つが表明されている。すなわち、<処刑という行為そのものが野蛮である>、あるいは<死刑制度がある国や州でも、殺人のような重大犯罪は相対的に少ないとは言えない>、そしてまた<処刑が行なわれてしまうと、のちに冤罪だと分かっても取り返しがつかない>、というもの。それでもってこの映画では、この中でもほぼあからさまに最後の問題が主題化され、なかなかに興趣のある「意外」な結末を迎えることになる。まあ、同じくKevin Spaceyが出演していたThe Usual Suspects(1995)を観てしまっている私には大体読めましたが…。
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というわけで、このところ観た映画の中では出色とも言える出来映えの本作、是非ご覧下さい。DVDもすぐに出ると思うので(というか、アメリカ国内盤は既に出てます。リスニング能力の弱い方でも、英語の字幕は付いてるはずなんで何とかなるかと…。)、そちらでもよろしいかとも思います。周到に練られた脚本なので、自宅でじっくり、というのは本作品に関してはむしろ正しい鑑賞法なのかも知れません。以上。(2003/09/15)