北野武監督作品 Dolls
ご存じ北野武監督の最新作。自殺未遂により精神に異常を来した若い女(管野美穂)とその原因を作った若い男(西島秀俊)が、とある理由により赤い紐で互いを拘束しつつ放浪する、というエピソードを中心に、やくざの親分となっているかつて別れた恋人(三橋達也)をじっと待ち続けるすでに老境に入った女(松原智恵子)と、自らの死期を悟ったその親分との何とも切ない交流、あたかも北野武のように交通事故で顔面を損傷し引退した元アイドル(深田恭子)と、彼女の顔を見ることが辛いので自ら失明した元追っかけ(武重勉・新人)のこれまた何ともやるせない心の交流、という二つのエピソードを織り交ぜて描く。身体や精神の欠損、あるいは置かれた社会的状況などによって、思いを自由に通わせることが絶望的に困難になった男達と女達は、まさに人形。北野武という人物がどうやら持っているらしい驚くべき諦念の存在に思い至ってゾクゾクするような感覚を覚えた次第。主役二人が放浪先でみることになる満開の桜、夏の海、紅葉、雪山という、四季折々の風物を盛り込んだ絶美映像にも堪能できるし(「余りにも露骨に国際コンペティション向けでは?」、という批判は可能であるが…。)、乞食である主役二人を含めて全員が来ている山本耀司デザインによる衣装も誠に素晴らしい。まあ、こんな高い服が、その辺に落ちているとは思えませんが…。以上。(2002/11/22)