ASIAN DUB FOUNDATION ENEMY OF THE ENEMY
極めて政治的な内容を持つ楽曲を提供し続けているミクスチュア・ロック/ダブ界の重鎮ASIAN DUB FOUNDATIONの新作。アメリカ合州国が近々行なう予定らしいイラク攻撃を巡って世界情勢が激動しているさなかに、このタイトル。やってくれます。まあ、実のところ、タイトル曲‘Enemy of the Enemy’は、911テロをもろにテーマとしていて、このことは歌詞カードにも注意書きの形で明記されております。他にも、例えば‘19 Rebellions’という曲などは1992年サンパウロで起きた刑務所内で受刑者への大虐殺が引き金となって起きた暴動を、具体的な数字を示しつつ主題化しているなど、そのメッセージ性はかなり強烈なもの。また、ドメスティック・ヴァイオレンスを扱い、これまたSinead O'Connorがゲスト・ヴォーカルとして参加している‘1000 Mirrors’にも、その被害者名が明示されている、といった具合に、曖昧さを許さない、あるいは初めから逃げ道を残さないでおこうとするその姿勢は基本的に「偉い」と考えるものであります。こんなところで。(2003/02/19)