Steven Soderbergh監督作品 Erin Brockovich
現時点で本年度アカデミー賞作品賞にノミネートされている新鋭Steven Soderbergh監督、Julia Roberts主演による、実話に基づいたお話。とても単純なお話で、要は三児を抱える離婚歴2回のシングル・マザーである実在の女性Erin Brockovichが、あくまでも〈食べるため〉に、これまた実在する弁護士Ed Masryが主幹をする法律事務所にゴリオシで就職し、ふと目にした公害問題に憤りを覚えつつヒューマニズムに目覚め、その住民訴訟の手助けをし、3億3千3百万ダラーズの和解金を勝ち取る迄を描く。Erinの、六価クロムをその工場周辺にばらまき(日本でも1970年代に問題化した。)、それを隠蔽しようとする大企業との孤軍奮闘は、確かに感動的なものだ。

 
問題は、何故にSoderbergh監督ともあろう人が、このような、展開も見え見えで、単純素朴なエコロジー思想やヒューマニズムを標榜する悪く言えば凡庸な映画を創らなければならなかったのか、というところにある。何しろこの監督、Sex, Lies and Videotapeでデビューし、KAFKAを創った人なのだ。ごく私的には、こういうストレートな良心的かつ啓蒙的な作品には歯痒さを覚えてしまう。もう一ひねり、乃至は工夫を施して、現代の寓話として昇華させて欲しかったところ。

 
ついでに言うと、弁護士事務所のこの訴訟における取り分は和解金の40%ということになっていて、そうすると1億3千3百2十万ダラーズの収入があった筈なのに−ちなみにこの訴訟にはもう一人有能な弁護士が協力するのでEdの事務所の取り分は半分であるとしても−、Erinに最終的に支払われる報酬がたったの200万ダラーズであるというのは、余りにも割に合わないのではないかと思う。使うものと、使われるものの構造的な(要は、当事者が気付かない)権力関係の存在を暗示しているのだろうか?

 
尚、本作品にはErin Brockovich本人がチョイ役で出演している。また、DVDソフトのおいしいところは特典映像=オマケにあるのだと思うけれど、その中にErin Brockovich-Ellis本人(この映画の公式サイトを開くと、どういう人なのかが分かります。期間限定かも知れませんが…。)へのインタヴュウが含まれていて、これを見ながら私は「そのままやんか。」などと呟くのであった。そう、少なくともJulia Robertsの役作りは確かに見事なものなのである。(2001/03/21)