Sinead O'Conner faith and courage
昨夏に静かにリリースされていたアイルランドの女性ロック・シンガーSinead O'Connerによる実に6年振りの第5作。Dave StewartやBrian Enoも参加している誠にゴージャスかつ大変ヴァライエティに富んだアルバムで、その歌唱法や作曲法の相似とも相まってPeter Gabrielの諸作品を彷彿とさせるのだが、その完成度の高さはそれらにも決して引けを取らない。アイルランド乃至ケルトの「伝統」楽器であるlow whistleの音があちこちに散りばめられているが印象的なのだが、日本国内盤の解説によるとどうやらこの人は最近アイルランド・カトリックに3人いる(というより「3人しかいない」、と言った方が良いのか?あるいは「3人もいる」、なのか?どちらなのだろう?)女性司祭の内の一人となったようで、かつての「因習や旧習」との全面的対立姿勢を転回させ、迎合と言うよりはむしろその戦略として内部から解体する方向に転じたのではないかとすら思わせる。単純に、「伝統」的なものを現状打破のために持ち出している、という見方も不可能ではないのだが、いずれにせよ誠に興味深い。私見では、ロックというものは政治的でなければ面白くも何ともないのである。(2001/03/10)