張芸謀監督作品 『我的父親母親』
中国映画界の「第5世代」に当たる若き大巨匠・張芸謀(チャン・イーモウ)監督の、心温まる小品。邦題は『初恋のきた道』。直訳すると「私の父母」だから、このくらいの改竄は当然とも言える。それはそうと、この作品、舞台は1958年頃の河北省のとある村。ここに赴任してきた新任教師に、この作品がデビュー作となった章子怡(チャン・ツィイー)演じる村娘が恋をし、紆余曲折を経て結ばれる。そして40年後、夫である教師は死に、残された妻と息子はその葬儀を執り行なう。基本的に、これだけである。見事なまでのシンプルさ。まあ、映画において大事なのは、瀬名秀明がその小説中で述べていたことを引き合いに出せば、「見せ方」なのであって、本作品もその点で見事に成功していると思う。特に、40年前の部分をカラーで描写することで、村娘が着る赤い服や、彼女が織る赤い布を鑑賞者に印象付け、現時点をモノクロームで描写することで教師の死や村娘の老いを印象付けたのは、誠に良く考えられた映画手法である。二つの時代に通底するのは、雪が持つ白という色であり、こうして赤・白・黒という民族学的三原色が出揃うことになる。そこに込められた、恐らくは無意識的に表出してしまったのだろう深い意味を読み取る作業は、ここでは敢えて避けたいと思う。別に難しいことではないと思うので。(2001/04/27)