Martin Scorsese監督作品 Gangs of New York
名匠Martin Scorsese監督による、アメリカ社会の持つあからさまな暴力性の起源を探ろうとする大胆な試みにして、それは図らずも自身の作家生活を総括しようという試みとも言い得る大作。舞台は勿論ニューヨーク。南北戦争、奴隷解放運動、アイルランド移民の大量流入等々を背景に、ギャング団の大ボス「肉屋のビル」(Daniel Day-Lewisが演じる。)に父親(Liam Neeson)を殺されたアムステルダム(Leonardo DiCaprio)が恋人(Cameron Diaz)等の協力を得てその復讐を遂げるまでを描く。19世紀のアメリカといえば、所謂「西部劇」という表象をもって語られることが多かったわけであるし(まあ、例外としてすぐに思いついてしまうのが、あの、結局は映画史上最高作なのかも知れない Gone with the Wind なのであるが…。)、そこで描かれる暴力はどう考えても「美化」されたものであった。本作品が誠に画期的なものであるのは、視点を一旦東に、つまりはアメリカ合州国の起点ともいうべき場所に戻しつつ、そこでの悪しき暴力の連鎖をクールに描ききった、という点に集約されよう。まあ、それは置くとして、本作で描かれるのはそればかりではなく、例えば後発の移民や黒人といったマイノリティが、排斥されると同時に選挙や戦争においては一票や一兵士としての必要性を課せられる、という今日まで引き継がれた元々移民が形成したアメリカ社会が持つ根本的な矛盾性である。イタリア系である同監督を含め、主役達を演ずる俳優の苗字をみれば分かる多民族性とも併せて、沈思黙考を迫られた次第。以上。(2003/02/08)