Frank Darabont監督作品 The Green Mile
全然知らなかったのだけれど、1,000円で観てしまった。それは兎も角として、それなりの評価を得、それなりの興行収益を挙げた本作品は、確かに決して悪い映画ではない。ただ、余りにも手法やテーマが古典的過ぎる。そもそもこのアイディアはカール・テオドール・ドライエルの歴史的フィルム『奇跡』(原タイトルも同監督の名前の綴りも何にも分からない。そもそもネット上にデータが存在しているんだろうか?)がとうの昔に凄まじくピュアな形で提示していたものである。もっと遡れば、『福音書』という事になるだろうか(死刑囚と看守という主人公二人の名前がそれぞれJohnとPaulである事を述べておこう。しかし、余りにも凡庸な設定である。)。「原罪の贖い」(本作品のテーマが「原罪なんて冤罪だ。」というものであるなら、それはそれで面白いと思う。)と、その代償としての「奇跡」だもんな。古いよ。もう一捻りあってしかるべき所だろうけれど、余りにも単線的な物語で、理解しやすいと言えばし易いのだろうけれど、私のような者には著しく物足らないのも事実であった。何せ、この監督及び原作者コンビの前作、The Shawshank Redemption(邦題『ショーシャンクの空に』)が余りにも良く出来ていたために(結局、本作品はThe Shawshank Redemptionと、同作品に主演していたTim Robbinsが監督したDead Man Walkingを足してドライエルの『奇跡』を振り掛けて6で割った物、という気がする。3ではなく6なのは、それらの作品に比べテーマの掘り下げが中途半端だからである。)、ラスト近くでは「まだ何かあるんでしょ?」などと期待しつつ観ていたのだが、想像を絶するような事は何一つ起こらない。予想外といえば予想外の事もあるにはあるのだけれど、こういう超常現象ネタはちょっとね。そうそう、要は<超常現象=癒し>が、ILMの映像技術による余りにも直截的なイメージで与えられてしまった事が、この作品をドライエルの歴史的フィルムから隔絶した物にしているように思うのだ。<奇跡の世俗化>、とでも言ってしまおうか。まあ、色々言いたいことはあるのだが、矢張り本作品が冗長極まりない事は否めない。2時間位に圧縮出来るんじゃなかろうか。誰にでも分かるように懇切丁寧に描く、というのは商業的にも有効なのだろうけれど、これでは余りにも観客を馬鹿にしているように思う。抜け落ちた部分は想像力で補う、というのが映画でも小説でも、その他ありとあらゆるジャンルの物語作品の基本的鑑賞法なのだと思うのだが、本作の如き「全部見せます」式のやり方は冒頭のシーンで揶揄的に扱われる「お昼のワイドショー」と変わらないではないか。もうちっと観客をして、思考を要求して欲しいと思った次第である。例によって蛇足だけど、不良囚人を好演したSam RockwellはGary Oldmanそっくりで、そうだとばかり思って観ていました。(2000/06/08)