Ridley Scott監督作品 Hannibal
可もなく不可もなくといったところの典型的なハリウッド式プログラム・ピクチャーである。取り立てて斬新なわけでもないし、かと言って退屈というわけでもない。取り敢えず、Ridley Scott監督の撮る喧噪に満ち溢れたフィレンツェ(ところで、「ハンニバル」と言えばローマのような気がするのだが…。というよりはローマ帝国か。世界史年表に載っている地図みたいなものを見ると、第2ポエニ戦争におけるカルタゴの名将・ハンニバルは取り敢えずイタリア半島を縦断している。イタリアが舞台になっている理由はこの辺にあるのだろう。)は、これまでのイメージをぶち壊していて、特筆に値するものと思う。さすがである。

もう一点、ギネスブックにその数が乗るくらい犯罪者を射殺しまくってきたFBIのClarice Starling特別捜査官(Julianne Moore)と、それなりに殺される理由がある人々を殺害し喰いまくる稀代の殺人鬼Hannibal Lecter医学博士(Anthony Hopkins)の、対決ないし心の交流、という図式はなかなかに楽しい。何故にLecter氏がStarling捜査官に「愛情」(「博士の異常な愛情」ってやつかな?)を注ぐのかが今のところ漠然としているのだけれど、どうせ商魂たくましいハリウッド映画人は続編を考えているのだろうから、多分Clariceと題されるのだろう(?)続編を楽しみにしたい。

蛇足だが、Lecter氏の4番目の犠牲者にして唯一の生存者である、顔面の皮を失った大金持ちの復讐者を演じているのは、とんでもない人である。エンド・ロールを見て、思わず声をあげてしまった次第。かのコスプレ(コスチューム・プレイの略語)大魔王も(と言えばあの人だとばれてしまうのだが。)、ここまでやるとは…。まあ、ほとんどのシーンはロボットを使って撮影しているように思うのだが、実は中に入ってたりして。ハリウッド映画の「悪役」はこの人をおいて他にはあり得ないと、改めて納得した。(2001/04/27)