Tom Tykwer監督作品 HEAVEN
Run Lola Run (1999 実は観てません…。)をヒットさせたTom Tykwer監督が、ドイツからの侵攻を受けていたかあるいはすでに占領されていたはずの1941年にポーランドで生まれ、1996年に惜しくも物故した天才映画監督Krzysztof Kieslowskiが遺した脚本を用いて映画化した、端的に「佳作」と言える極めて良質な作品である。
舞台はイタリアの大都市Torinoおよび片田舎。英語教師を務めるPhilippa(Cate Blanchettが演じる。)は警察と癒着関係にある麻薬王の爆殺に失敗。そのために何の関係もない4人の市民が巻き添えで死亡、彼女は当然逮捕され、確信犯だったにもかかわらずその事実を知らされ苦悩する羽目に。そんな彼女に一目惚れし、その窮地を救おうとするのが、Philippo(Giovanni Ribisi)という名の記録係。そうして、二人の絶望的な逃亡劇が始まることになる。
要は、全く無駄のない、これ以上削れないという感じの端正な作品で、話の展開からして外連味(けれんみ)を出そうと思えば出せただろうし、そうすればそこそこ興行収入の望める一エンターテインメント作品になっていただろうけれどそうしない禁欲主義に、製作者達の持つ故Krzysztof Kieslowski監督へのリスペクトの凄まじいばかりの強さを感じたのであった。まあ、そんなところで、と言いたいところだが、全編を流れるArvo Part(最後のaはウームラオト。アルヴォ・ペルトと読んで下さい。)のピアノ曲が、誠にいい味を出していたことも付け加えておく。以上。(2003/03/30)