Chen Kaige監督作品 Killing Me Softly
中華人民共和国出身で、いわゆる「第5世代」と呼ばれる人たちの代表格と言っても良いChen Kaige(陳凱歌)監督が、初めてハリウッドに乗り込んで撮った「娯楽映画」である。
舞台はロンドン。若い「ブロンド美女」の女性会社員であるAlice(Heather Graham。あのBoogie Nightsに「スケート・ガール」として出ていた、今日における大変な売れっ子女優です。ついでに言うと、この人の名をいや増しに高めることとなったAustin Powersシリーズは、とうとう第3作までいってしまったようですね。)は、偶然街で出会った美貌の登山家Adam(Joseph Fiennes)と激しい恋に落ち、同棲相手を捨てて結婚。しかし、どうやらAdamには凶暴な性格と、何やら怪しい過去があることを徐々に知っていく。その疑いが頂点に達したとき、悲劇が起こるのだが、それが何なのかは述べないでおこう。
はっきり言って、詰まらない映画である。不入りも宜(むべ)なるかな、という感じ。人物造形も薄っぺらいし、ディテールもおざなり。ついでに言うと、物語の展開も、極めて不自然で、「これは一体何なの?」に近い。同じように「セックス・ヴァイオレンス・サスペンス」を三大テーマとし、作りに作り込んだ脚本で魅せた傑作Basic Instinct(1992。邦題『氷の微笑』)のような作品の後で、「これはないでしょう。」と思ったのは私だけではあるまい。あの超傑作『覇王別姫』を撮った同監督が、よくもこんな脚本で映画を作る気になったものだと、あきれると同時にまた感心さえしてしまった次第なのである。
と、ボロクソにけなしてきたが、この作品においてハリウッド映画、というよりA.Hitchcockの映画手法をやすやすとコピーできることを覚えてしまった同監督が、この次に何をするのかは極めて楽しみではある。次回作においては、良い原作・脚本に巡り会い、この人本来の創造力を発揮してくれることを期待したいと思う。以上。(2002/03/05)