Jean-Jacques Beineix監督作品 MORTEL TRANSFERT
Jean-Jacques Beineix監督による、Jean-Hughes Anglade主演の、実に8年ぶり長編フィクション映画である。邦題は『青い夢の女』(何じゃそりゃ、という感じの物凄いセンスです。)。MORTEL TRANSFERTという原題は、文法的におかしいような気がするのだが、一応直訳すれば「ひどい転移」とか「死ぬほどの転移」となるんだろう。前者をとった場合、英語にしてしまうとbad tranceになってしまうのだろうけれど、何だか昨年流行ったコンピュータ・ワームのようで気が滅入る(精神分析学用語の「転移」と、bad tranceという場合のtranceは全然意味が違う、ということも一応断っておく。)。
それは兎も角として、「転移」という言葉はまさしく精神分析学用語なのであって、主人公のMichel(J. Angladeが演じる。)は精神分析医。ごく簡単にこの映画のプロットを要約するならば、Michelは幼い頃に両親の性交渉を見てしまったことがトラウマとなって女性との性的関係をうまく築けないでいるのだが、暴力的な夫との間の性的関係が常軌を逸したものになってしまっている女性患者Olgaが面談中に彼がうっかり居眠りをしている間に何者かによって絞殺されてしまう、という事件をきっかけにして起こる諸々の出来事を通じて回復していく、というものである。
何とも古典的(映画の中ではJacques Lacanにも言及していたけれど、この作品を貫くのはどう考えてもFreudismである。)かつ凡庸とさえ言えるテーマ設定と、今時これではと思うくらいの安直かつ他愛ない物語構成に驚かされるのだけれど、この映画が第6作目になる同監督、実は一本おきに傑作と失敗作を交互に産み出すという、トンでもない特技を持っているとしか考えられないところがあり、この作品はそれを改めて証明してしまったように思った次第。まあ、ということは次回作に期待できる、ということなので、首を長くして待つことにしたい。(ちなみに、首の長い哺乳類と言えば「キリン」なのだけれど、この映画でも誠にシンボリックな形で用いられている。ああ、何とも詰まらないことを書き込んでしまった…。)(2002/01/11)