Brett Ratner監督作品 Red Dragon
ご存じAnthony Hopkinsが演ずる人食い医学博士Hannibal Lechterを中心人物に据える、猟奇殺人とFBIによるその捜査過程等々をつぶさに描くシリーズの第3弾。ただし、本作で描かれる時期は、第1弾の傑作THE SILENCE OF THE LAMBS (1991)より前の、Lechter氏が逮捕されて直後あたりに設定されている。
このシリーズが画期的であるのは、何と言っても獄中にあるLechter氏が犯罪心理学なり犯罪精神医学の専門家であり、更に言えば最高権威であり、そんなこともあってアメリカ合州国などにおいて日々頻発する猟期殺人事件の捜査に行き詰まりがちなFBIは、致し方なく彼に捜査協力を要請する、という辺りの図式なのだけれど、第2弾Hannibal (2001)でやや崩れたこの図式を、本作では復活させ、大いに活用している。
細かい点はネタ晴らしとなるので省くけれど、Edward Nortonが演ずるFBIの捜査官Will GrahamとLechter博士の息詰まる対話劇、あるいはRalph Fiennesが演ずる児童虐待によって屈折した人格(要は多重人格)を持ってしまった殺人鬼、即ち自称「レッド・ドラゴン」と、彼と心を通わせる唯一の人物であるEmily Watsonが演ずる盲目の女性との切ない恋愛劇等々、なかなかに見所の多い快作であることは間違いない。そうそう、こんな感じで記述したように、なによりもキャストが素晴らしいのである。ついでに言えば、Will Grahamの上司はかの名優Harvey Keitelが演じているといった具合。
ちなみに、監督をしている人物のBrett Ratnerという名前は初耳だったのだけれど、この方、未見の映画Rash Hourシリーズを撮ってきた人物。さすがに揉まれている、あるいは鍛えられている、というか、誠に要所を心得た、実に実にハリウッド然とした巧みな演出には確かにキラリと光るものが多々あるのであった。そうそう、「ハリウッド映画」で思い出したが、この作品のオリジナルは実のところ、A.Hitchcock監督が残した結局史上最高なのだと思うサイコ・スリラ映画、その名もズバリ Psycho ということになるのだろうけれど(つまらん駄洒落多発御勘弁。)、その辺のところは両作品を実際に見ていただければ一目瞭然なので、記述を断念する。蛇足だけれど、どうもわたくし、Anthony PerkinsとAnthony Hopkinsというよく似た名前の二人を以前から混同しがちなのである。以上。(2003/03/01)