Jean-Jacques Annaud監督作品 Enemy at the Gates
邦題は『スターリングラード』。時は第2次世界大戦下の1942年。ソヴィエト−ドイツが激突したスターリングラード攻防戦における、伝説のスナイパー・Vassili Zaitsev(Jude Law)の愛と苦悩、そしてドイツ軍が誇る天才スナイパーであるKonig少佐(Ed Harris)との息詰まる死闘を描く西部劇風の戦争映画である。

この監督のリアリティの追求はThe Name of the Rose以来つとに有名だけれど、それは本作品においても健在で、「一体幾らかかったのか?」と問わずにはいられないスターリングラードの、ジオラマどころではないセットのべらぼうな規模と精密さには驚嘆を禁じ得ない。

まあ、逆に言えば本作品はそれだけが見所の、ある意味で誠に凡庸なプログラム・ピクチャーであり、別段予想外のことが起こらない単調なストーリー展開には物足りなさを感じざるを得なかったのも事実である。戦争とは一対一の勝負などでは決してないのに、再三にわたり死屍累々たる情景を描き出しながら、結局はそこ―要は英雄同士の勝負――に還元してしまった点についても疑問を抱く。

と言いながら、西側(これはアメリカ映画なのだよね?)の映画資本が、スターリン率いるソヴィエトや、更に言えば一応主人公の敵であるナチス・ドイツさえも、必ずしも「悪者」として描いていない本作品を創り得たところに、時代の流れを感じ取った次第である。

蛇足だけれど、Bob Hoskinsが出てきたとたんに、「あ、この人ってフルシチョフなのだな。」と認識した次第。今まで考えたこともなかったが、この二人、実はそっくりさん同士なのであった。(2001/05/03)