The Chemical Brothers Surrender
The Chemical Brothersの第3作。誠に素晴らしい出来映え。1970年代のジャーマン・プレグレへのオマージュともとれるかも知れないチープなシンセサイザー音(ピコピコピコピコ。何を使っているんでしょう?ミニ・ムーグ?で始まる第1曲から、Jonathan Donahueがヴォーカルをとる4AD的なドヨーンとしたフォーク・ロック・ソング的趣きのある第11曲まで、全く釘付けにされてしまった。第3曲には元New OrderのヴォーカリストBernard Sumnerが参加(活動してますな。)。これは恐らくシングル・カットされるんだろうけれど、New Order的どころかそのもの、という曲。一曲飛ばして第5曲にはOasisのNoel Gallagherが前作に引き続いて参加しているのだが、ここではOasisを飛び越して1960年代のサイケデリック・サウンドまで遡行してしまっている。やってくれます。この後は、ドヨーン系の第7曲、underground風な第8曲、いかにも彼等らしい第一弾シングルの第9曲と続き、これまたジャーマン・プログレっぽいタイトル・トラックの第10曲、そしてラスト・トラックへ、という展開。合計約59分は、この曲数にして、さらにはこの手の(アシッド・ハウス系という意味です。)アルバムとしてはやけに短いのではないかと思うのだが、要は一曲一曲がコンパクトかつ緻密に作られているのでこうなった訳です。最高の密度と同時に万華鏡的変幻自在さを兼ね備えた本アルバムは、今のところ本年度上半期(ここ数年あるいは数十年かも知れないけれど、判断を下すのはもう少し聞き込んでからにしたい。)の最高作なのではないかと、個人的には思う。これを超えるものが、下半期に果たして出てくるんだろうか。それ程の作品なのである。(1999/06/14)