Lasse Hallström監督作品 The Shipping News
ピューリツァー賞受賞作であるE.Annie Proulxの同名小説を原作とした、ご存じLasse Hallström監督がメガホンを取った話題作である。
要約しよう。物語の舞台は、カナダはニュー・ファウンドランドの寒村にして漁村。母(Petal Bear。Cate Blanchettが演じる。この人、最近は本当に良く出てますね。)の事故死によりやや精神的に危うい状態に陥った娘(Bunny。Gainer三姉妹が演じる。)と何だか秘密を持っていそうな叔母(Agnis Hamm。Judi Denchが演じる。)以外の全てを失った情けない男(Quoyle。ファースト・ネームは無いようだ。Kevin Spaceyが演じる。)は、一族の故郷であるこの地に生活の場を移すことを余儀なくされるのだが、取り敢えずは当地の新聞社に就職。
以後、運良く「港湾便り(=The Shipping News)」と呼ばれるウルトラ・ローカル新聞紙上で村の出来事に関するコラムを担当することになり、これが好評を博し、また、当地に住む傷害のある息子を持った美貌の未亡人らしき女性(Wavey Prowse。Julianne Mooreが演じる。)とも何となく良い関係になり、更にはまた、叔母の秘密を含めた一族の忌まわしい過去を知りつつ、それによる内面の葛藤を克服し、娘の危うい精神状態も自ら発したとある一言によって改善にやがては向かう、という、まあ、どん底から恢復していく人々を同監督らしい優しく包み込むような筆致で描いた誠にハート・ウォーミングな作品となっている。
まさに、Hallström節炸裂とも言うべき詩情と叙情に溢れた作品で、一見の価値はある、と言っておこう。個人的に大変興味深かったのは、実際既に薄々理解している母の死を、「天使と眠っている。」と説明されることでダブル・バインド状態に陥ってしまったBunnyが、父親であるQuoyleから「もう知っているのだろうけど、ママは死んだんだ。」と明言されることでそれを受け入れ、克服していく、という下りであった。そう、この作品において原作者その他は、「人の死」というのは言語化されることによって最終決定されるに過ぎないものなのであると同時に、だからこそそれを乗り越えるのにもまた、言語というものに多大な役割が与えられることになっている、ということをいみじくも訴えているのだと、勝手に解釈した次第である。ということで。(2002/04/04)