PRINCE 3121
プリンス(Prince)がこの春世に送り出したUniversal Records移籍後初の2年振りオリジナル・アルバム。1980年代にやっていたような音作りにどうやら回帰を果たした感のある、その最高傑作1999以来久々の「4文字数字」をタイトルとした傑作。その辺りのことは、2曲目"LOLITA"だの、4曲目"BLACK SWEAT"、あるいは6曲目"LOVE"などのディジタル・ファンクと言って良いだろう形態を持つ楽曲群に端的に現われている。他の楽曲も、この人らしい創意に満ち溢れているし、何と言ってもアルバムを通して聴くと緩急のメリハリと全体としての統一感が素晴らしい。付け加えるなら、終盤に進んで、タマル(Támar)という女性ヴォーカルをメインとする第10曲"BEAUTIFUL, LOVED AND BLESSED"や、懐かしい人(自分で調べてくださいね。)がパーカッションをやっている最後の12曲目"GET ON THE BOAT"といった、凡庸なアーティストのアルバムなら捨て曲が入りそうなところにアルバムの中核になってもおかしくない曲が入っているという何とも贅沢な構成には驚嘆せざるを得ない。先に紹介したドナルド・フェイゲンもそうなのだけれど、こういう職人芸的な作り込みをなされた作品を世に問えるアーティストというのは私が考えるにとても貴重な存在なわけで(日本だと山下達郎さんがこれに当たるわけだが。)、こういった面々が次々にアルバムを発表している状況はごく個人的には大変うれしいものなのである。以上。(2006/04/30)