Kevin MacDonald監督作品 The Last King of Scotland 2007.10(2006)
ウガンダの独裁者であったアミン大統領(Idi Amin)を演じたフォレスト・ウィテカー(Forest Whitaker)がその鬼気迫る演技で見事第64回ゴールデングローブ賞主演男優賞(ドラマ部門)、第79回アカデミー賞主演男優賞などなどに輝いた一応話題作と言える作品。監督はケヴィン・マクドナルド(Kevin MacDonald)という名前からしてスコットランド人である人物。と思って調べてみたら案の定グラスゴウ出身。ついでに、ほぼ主役級の青年医師ニコラス・ギャリガン役ジェームズ・マカヴォイ(James McAvoy)も同じくグラスゴウの出身。この人、『ナルニア国物語/第1章』(2005)にもさりげなく出ていた有望株なのだけれど、それはさておき、と。
舞台はアミン統治下だった頃のウガンダ。国際ヴォランティアに何となく目覚めたスコットランドの青年医師が、単身ウガンダに乗り込んで仕事を始めたところ、あちこちで目にしたアミンのカリスマ性に惹かれるようになり、そのうちにいつの間にやらその主治医となってしまい、更にはその妻の一人と仲良くなってしまい、ピンチを迎える、というお話。
どうやら実話ではなさそうなので、というよりもこれはジャイルズ・フォーデン(Giles Foden)という人が書いた1998年刊行で日本語訳も新潮社から出ている同名小説の映画化であって、全く実話ではない。別に実話でなくとも構わないのだが、実在した人物=アミン氏を登場させた以上は彼と関係する部分はもう少し考証をしっかりやってきちんと作るべきではないか、と考えたし(本人が生きていないから許されるというものではないわけだし。)、終盤を単なる不倫サスペンスにしてしまったところはかなり問題で、これでは折角面白い題材を取り上げ、ウィテカーに凄まじい役作りをさせた意味がほとんど無くなっているように思ったのである。
まあ、物語自体はひどいものだけれど、というより「人の人生」を勝手放題に描くな、と思うのだけれど、多分にフィクシャスなところもあるとは言えアミンの人物造形、即ち非情な独裁者であるにも関わらずその実妙に温厚なところもあり、基本的に底抜けに明るくて、そしてまた病的に臆病、というところなどは、アミンに関する記録を調べたのかどうか良く分からないのだがなかなかに面白いと思った。人類学が長らく扱ってきた王権についての議論などをちょっと読み返したくなった次第。以上。(2007/12/07)