リュック・ベッソン監督作品 『Angel-A』
スタイリッシュな作風で夙に知られるある意味天才映画監督と言って良いだろうリュック・ベッソン( Luc Besson )が6年ぶりに監督をした劇場版長編映画。前作Jeanne d'Arcが1999年の制作で、本作のフランス共和国での公開が2005年なので6年ぶり、ということになる。まあ、細かいことなのだが。
さてさて、この映画、同監督の作品としては久々に全編フランス語台詞なのだが、そういう形式の映画となるともっと遡らないといけない。1990年の『ニキータ』( NIKITA )ということになってしまう。まあ、言ってみればこの作品、世界的成功を収めたベッソンの記念すべきフランス凱旋映画、ということになるのかも知れない。ちなみに、これまでの英語台詞映画とは違ってアメリカでの公開はやたらと遅れていて、現時点ではまだな模様である。
作品の内容はと言えば、借金まみれの冴えない男アンドレ(ジャメル・ドゥブーズ Jamel Debbouze )が、その自殺間際に現れた謎の長身美女アンジェラ(リー・ラスムッセン Rie Rasmussen )のサポートを受けながら苦難を払いのけ、真の自分やら真の愛に目覚める、というようなもの。どこかのコミックから取ってきたような単純なストーリィながら実にいい話で、観る人によっては涙チョチョ切れものなのではないかと思う。
そういうところも見所なのだろうけれど、この作品が圧倒的に素晴らしいのは、全編モノクロームで縁取られるパリの情景や二人を中心に据えた各場面各場面の何とも美しいところにある。フランス映画の基本的な語法を踏まえつつ、そこに長年の映像作家生活で培われた独自のスタイルを盛り込んだ一つのファンタジィを構築することに見事な形で成功していると思う。(2006/05/24)