Martin Scorsese監督作品 The Aviator 2005.08(2004)

第77回アカデミー賞で11部門ノミネート、そのうち5部門受賞の快挙を成し遂げた、大富豪にして偉大な飛行家でもあるハワード・ヒューズ( Howard Hughes 。1905-1976)の半生を描く伝記映画。監督にはマーティン・スコセッシ( Martin Scorsese )を起用、主演のレオナルド・ディカプリオ( Leonardo DiCaprio )をはじめとして、キャサリン・ヘプバーン( Katharine Hepburn )役のケイト・ブランシェット( Cate Blanchett )、腹心の部下ディートリッヒ役にジョン・C・ライリー( John C. Reilly )などなどといった具合に、実に演技のうまい役者を揃えたきっちりとした仕上がりの作品となっている。
飛行家にして映画製作者であり、要するに超セレブのハワード・ヒューズについては数多くの評伝が書かれていたりするのだが、手っ取り早くは例えばWikipediaの中のこの人に関する情報を見て欲しい。まあ、実際とんでもない人であることは間違いなく、これだけの人物についての映画なり何なりが面白いものになるのは当たり前の話なのだが、それを実現するには多分色々障害があったのだと推測され、要するに恐らくは関係者の大部分が死亡し、財産の処理もほぼ終わり、映画というあちこちへの影響の大きなものをそろそろ作っても良い情況になったので製作した、ということなのだろう。
さてさて、肝心の中身についてだけれど、基本的にはハリウッドがお得意とするプログラム・ピクチャの作法に従った映画なのだと思う。大金持ちで何不自由無いかに見える彼は、その実潔癖症と強迫神経症(で良いのか?)というハンディキャップを負っていて、推進しようとする航空事業を邪魔せんとする敵がそういう弱みにつけ込む形で仕掛けてくる様々な妨害に遭うのだが、最後は本人が持つ不屈の精神と周囲の暖かい協力により色々な障害を克服して成功者となる、という物語構造は、基本的に数あるヒーローもの映画と変わるところは無い。
とは言え、上述の通りのうまい役者たちの名演技と、名匠によるそつの無い見事な演出、あるいは良く練りこまれた脚本や細部までこだわった美術、そして何と言ってもお金をかけまくりの特殊撮影等々、実に見所のある作品で、3時間弱という長大なものなのにさほど長いとは感じないほどの出来栄えとなっているのは間違いの無いところである。そういう技術的なことに加えて、単なる大金持ちの成功物語では無く、終盤では今日も存在するはずの官・産・軍の間にある利権構造を暗に批判しているところもあったりと、なかなかにひねりもある傑作だと思う。以上。(2005/12/22)