Kenneth Branagh監督作品 『ベルファスト』
北アイルランド・ベルファスト出身の映画監督・俳優であるケネス・ブラナー(Kenneth Branagh)による自伝的作品。英国・アイルランド共同制作。向こうでの公開は本年1月。つい先日、第94回アカデミー賞で脚本賞に輝いている。
1969年。9歳のバディ少年(ジュード・ヒル=Jude Hill)は、ベルファストで両親・祖父母の愛情に包まれ幸せな日々を送っていた。しかし、ある日のこと、プロテスタント系の若者たちが、カトリック教会を襲撃する。両者の対立は激化し、やがてバディの家族も巻き込まれていくのだった。
50年程前の話。この紛争は1997年から2007年くらいにはほぼ終息した、とされるが、プロテスタント系とカトリック系住民の間の確執には今なお根強いものがあるらしい。ちなみに、映画の中でも描かれるが、ケネス・ブラナー自身も、1969年に家族と共にロンドンに移住している。
北アイルランド出身のヴァン・モリスン(Van Morrison)の音楽が特筆に値するが、他にも、良く練り込まれた演出や脚本、あの頃を再現した美術等々見どころ満載。最近の映画としては異例なくらい短い1時間半強という尺が示すように、余計なことには触れず、ストレートに人と人が憎みあうことの虚しさを表現することに注力し、見事な形で成功している、と思う。
世界的成功を収めた名匠が幼少期からずっと温めてきて、満を持して世に放った、という感じの佳品である。以上。(2022/04/10)