Neil Jordan監督作品 Breakfast on Pluto 2006.12(2005)
アイルランド共和国生まれの最早巨匠となった感のある映画作家ニール・ジョーダン(Neil Jordan)による、これまたアイルランド生まれの現在最も注目すべき俳優の一人キリアン・マーフィ(Cillian Murphy)を主演に据えた傑作である。リアム・ニーソン(Liam Neeson)も重要な役柄=マーフィの父役で出ているのだが、この二人の取り合わせはどこかで見たような気もする(というか、どこだか分かっているのだが敢えて記さない。)。
舞台はこの監督の作品のほとんどがそうであるようにアイルランドと英国。性同一性障害を持つ生物学的には男性な主人公パトリック=キトゥンの何とも「悲惨」な半生を、IRAによるテロが続発していた1970年代という時代を背景として描く。ちなみにある有名な作品をもじったタイトルにある「プルート」とは、冥王星のことを指している。
上に書いたとおり確かに悲惨な話ではあるのだが、映画全体としてはむしろ明るい雰囲気に包まれていて、その辺りの演出というか脚色が見事である。自分を捨てた母親探しだの父親との不和だのといったもの凄く古典的なプロットもなかなかに泣かせる。(蛇足めくが、後者のエピソードのクライマックスでは、これまたあるとても有名な映画が援用されている。)ゴールデン・グローブ賞ノミネートという偉業を成し遂げたマーフィの何とも艶めかい装いと、その卓越した演技も必見だと思う次第。以上。(2007/01/10)