Christopher Nolan監督作品 『The Dark Knight Rises』
クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)監督+クリスティアン・ベイル(Christian Bale)によるバットマン・シリーズも今回で3作目。前作The Dark Knight(2008)の出来が余りにも素晴らし過ぎたため、さすがに続編を作るのは大変で、結局4年かかってしまった、というところなのだろう。ああいう奇跡のような作品に一体どのくらい近づけるのだろう、超えるのは多分無理だろうけれど、というような複雑な心境の元に鑑賞。
今回の敵役は凶悪にしてその実かなり知性的な闇の使者ベイン。いわく付きの過去を持つらしいこの悪役を演じるのは何とトム・ハーディ(Tom Hardy)。後でクレジットを見て結構驚愕。何しろ、体型やら雰囲気やら、これまでとは全く違うではないか。役作りの鬼がまた一人増えたな、といったところなのだがそれはさておいて。本作、物語としては前作から8年後の話になる。
前作で全ての罪をかぶって表舞台から姿を消したバットマンことブルース・ウェイン(クリスティアン・ベイル)だったが、ある日彼の前に美しい女泥棒=キャット・ウーマン(アン・ハサウェイ=Anne Hathaway)が現われた辺りから状況は一変。ベイン、あるいはその背後にいる黒幕によって財産を失い、そしてまたゴッサム・シティを丸ごと壊滅させかねない大規模なテロを起こしたベインの手によって窮地に立たされることになったウェイン。果たして彼は再び立ち上がり、ゴッサム・シティを救うことは出来るのか、という物語。
豪華な脇役達は基本的に健在だが、そんな中、マイケル・ケイン(Michael Caine)の影がやけに薄いのが気になった。体調崩して撮影に余り入れなかったのではないかなどと心配。みんないい歳ですからくれぐれもお大事に。そんな中、若い世代では今回登場のアン・ハサウェイ、そしてInception(2010)でトマス・ハーディと並んで鮮烈な印象を残したジョセフ・ゴードン=レヴィット(Joseph Gordon-Levitt)がゲイリー・オールドマン(Gary Oldman)演じるゴードン本部長の部下に当たる熱血刑事を好演。この二人、ショウビズ界の世代交代、を予感させてくれる。
さて、確かに前作ほどの深みや重みはないにしても、アメリカ社会、ひいては今日の世界が抱える難題に真摯に向き合い、それを見事な完成度の作劇に上手く溶け込ましている辺りはさすがである。長い映画ではあるけれど、無駄な場面は全くなく、隅々まで計算し尽された極上のエンターテインメント作品に仕立て上げられている、と言っておきたい。これにてこのスタッフとキャストによるシリーズは完結となるらしいが、この3部作、近年のハリウッドが打ち立てた金字塔、と述べておく。以上。(2012/08/20)