Terry Gilliam監督作品 『Dr.パルナサスの鏡』
ご存じ『モンティ・パイソン』制作メンバの一人であるテリー・ギリアム(Terry Gilliam)による最新の劇場映画。原題はThe Imaginarium of Doctor Parnassus。かれこれ70歳になるギリアムの集大成的な作品として構想されていたのだと思うのだが、2000年頃に作っていた『ドン・キホーテを殺した男』が主演のジャン・ロシュフォール(Jean Rochefort)降板で頓挫したのに続いて、今回は周知のように主演トニー役のヒース・レジャー(Heath Ledger)が撮影中に急逝。これもまた完成が危ぶまれたがジョニー・デップ(Johnny Depp)、ジュード・ロウ(Jude Law)、コリン・ファレル(Colin Farrell)の3名が「鏡の中」でのトニーを演じることで何とか完成の運びとなった。
「イマジナリウム」という入った者に想像の世界を見せる道具を用いて見せ物巡業を続けるパルナサス博士(超ベテラン俳優クリストファー・プラマー=Christopher Plummerが演じている。)は、その悪魔(トム・ウェイツ=Tom Waitsが演じる。)との契約により、間もなく16歳になる娘(リリー・コール=Lily Cole)を引き渡す日が迫っていた。娘を渡したくない博士は、悪魔と新たな賭をすることに。そんな中、橋の下で首を吊り死にかけていた青年トニーを発見しこれを保護。一行と行動を共にし始めたトニーの天才的商才により見せ物小屋は突如として繁盛し始めるのだが…、というお話。
確かに面白いし、いかにもギリアム、という感じの作品でもあり、役者たちも何とも豪華絢爛。アカデミー賞にノミネートされた美術と衣装についても確かに非常に優れている、としか言いようがないものではある。しかし、どうも物語としてのひねり具合に物足りなさを感じてしまう。要するに、恐らくはレジャーの死により元々の構想から離れざるを得なくなり、強引につじつまを合わせたのだろうことを色々なところから感じてしまうのだ。それでもまあ良くまとめた、とは思うのだが、レジャーの死を知らなければ、「何これ?」と思うはずの出来映えなのである。次回作に期待したい。今度こそ不幸の起きないことを祈る。以上。(2010/02/17)