庵野秀明総監督作品 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
『新世紀エヴァンゲリオン』の新劇場版4部作の第3弾である。第2部『破』で予告編が流れ、そこではこれと完結編を合わせて上映、とされていたはずだが、いつの間にか尺が長くなったようで、単独上映となった。第4部にして完結編は来年公開予定、とされている。
『破』の出来が余りにも凄まじいものだったので、今回はそれを超えるものを期待。ただ、かれこれ3年待たされているため、前作ってどう終わったんだっけ、という人が多いと思うのだが私もそう。なんかこう、TVシリーズのインパクトというか記憶が15年以上経っても消えておらず、『破』というよりそっちを思い出してしまう。まあ、観ていくうちに思い出すだろう、などと考えつつ鑑賞を。
で、この『Q』、のっけから見たこともないシーンが続く。どうやらシンジ君、別の世界に飛ばされたかなんかなのかな?、やっぱり『ひぐらし』とかその一連のエピゴーネンみたいなもの?、いやいや『エウレカセブンAO』みたいなもんかな?、などと思いながら観ていたのだが、実は、何だか凄く普通な展開でした(笑)。
そうそう。遂に来たか、という感じで巨大戦艦を出してきたり(『ヤマト』へのオマージュでもあり、『ナディア』への原点回帰でもあるのだろう。)、TVシリーズでは実はとんでもなく出演時間が短かったカオルとシンジの関係にほぼ全編が当てられているという大胆なことをしていたりはするのだが(予告編にもなっていた連弾シーンは本当に素晴らしい。)、実はTVシリーズとその後の旧劇場版が語っていた物語から、そんなに外れていない話が展開されていくことになっている、ということに結構驚いた、のだった。
『破』でああしておいて、と言っても何が行なわれていたのかイマイチ思い出せなくなっているのだが(笑)、『Q』も冒頭こそ物凄い世界観ぶっ壊し、には違いないのだけれど、案外基本路線に戻ったというか、実はそっちの方が意外に感じた次第である。
まあ、色々驚かされることの多いこの作品だけれど、本編上映の前に流れるジブリ制作の実写映画『巨神兵東京に現わる 劇場版』には結構度肝を抜かれたし(樋口真嗣が監督していて、林原めぐみが読み上げるテクストは舞城王太郎による。)、そもそもこの作品の予告編や様々な商品、サーヴィスとのコラボレーションといったプロモーションのあり方も非常にインパクトのあるものだった。
そんな、作品内じゃないところでも色々と見せ所を作り続けているこの作品だが、『破』でようやく芽生えかけた恋をあたかも何もなかったことにしてしまうかのような、あるいは新劇場版全体のキーパーソンかと思われたカオルをゼーレの単なる手駒にしてしまってTVシリーズの設定に戻すような展開、これ、完結編でどう収集つけるんだろうか。以上。(2012/12/01)