ご存じ英国のテクノ・ユニットであるThe Chemical Brothersが初夏くらいにリリースした新作。全体として、いつになくあんまり歌ものじゃない感じの仕上がり。人間の声、というか言葉、あるいはもっと言えば聞き取りうる言葉が極端に少ないのだ。だからこそ効果的なのだが。それでもって、わざとチープな感じのピコピコ・ポコポコ音、ついでにキュワーンってな音が心地よい。色々やってきて、一旦こういうシンプルなものに立ち返ってみたかったのかな、などとも思う。集大成的にして、抜粋的にして、要約的にして、極めてピュアなアルバムだと総括しておきたい。さてさて、全8曲からなるそんなアルバムの中身だけれど、中でも、Stephanie Dosenが歌っているというよりは囁いている1."Snow W"は個人的にはベストな楽曲。ついでに言うとこの曲を聴くと『ロスト・イン・トランスレーション』を思い出してしまうのだけれど。分かる人には分かるだろう。サイケな4."Dissolve"、インダストリアルな5."Horse Power"に何となくレトロ感、というかこれって前にもやってなかったかな感を味わいつつ、でも悪くないな、などと独りごちもする。レトロと言えば、その次の6."Swoon"なんてまるで昔のYMOじゃないか(笑)。素晴らしいけど。アンビエントにしてロックンロール、しかもプログレな8."Wonders of The Deep"の壮大な展開には感動を覚えてしまう。タイトルも壮大だけど、なんか笑える。大体そんなところかな。今更感も出てきたけれど、やっぱり凄い奴らだね、という納得することしきりのアルバムである。以上。(2010/09/21)
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