Adam Shankman監督作品 Hairspray 2008.04(2007)
1988年に、奇しくもその年に心臓発作で亡くなったディヴァイン(Divine)というPink Flamingos(1972)というとても重要な映画に出ていたことで知られる男優を主人公の母親役として起用して創られた映画をミュージカルにした舞台(初演は2002年)の映画化である。その、主人公の母親役は今回ジョン・トラヴォルタ(John Joseph Travolta)が担当、この人の演技が余りにも素晴らしいのと、オリジナル版の監督であったカルト・ムーヴィ界の大御所ジョン・ウォーターズ(John Waters)が一瞬出演していたりするのが面白いのだが、それはさておき、と。
舞台はディヴァインの出生地でもあるボルティモア。時期としては公民権運動が盛んだった1960年代ということになる。ボルティモアのローカル局が流している音楽ショー番組のレギュラー出演を夢見る、太めで背が低いけれど歌と踊りは一級品な女子高生トレイシー(ニッキー・ブロンスキー=Nikki Blonsky)の、その夢と既にレギュラーになっている素敵な同級生男子への想いの道行きを中心として物語は進行する。
話はさほど単純ではなく、トレイシーが同じ学校に通うアフリカ系の友人達からR&B系のダンスを学び、これによって才能が開花、これを見たレイク(ザック・エフロン=Zac Efron)に認められるようになって番組出演を勧められその夢に一歩近づいたりするのだけれど、さりとて上の番組には白人とアフリカ系住民は同時に出演できない、というような差別的な規定があったり、番組を仕切る女性プロデューサ(ミシェル・ファイファー=Michelle Pfeiffer)はアフリカ系の音楽やダンス、ひいては人々を基本的に蔑視していたり、というところがあり、一筋縄ではいかないのだが、要するにこういうことがこの映画の中心テーマにもなっているわけである。
かなり重たいテーマを背負った作品なのだけれど、全篇を通してそのトーンは極めて明るい。取り敢えずは青春映画の傑作と言えるだろう。重いテーマの練り合わせ加減もうまくいっている。音楽、ダンスの作り込みも大変秀逸なものであり、必見、というレヴェルの作品に仕上げられていると思う。母親役のジョン・トラヴォルタについては上に書いたけれど、父親役のクリストファー・ウォーケン(Christopher Walken)や、ミシェル・ファイファー、あるいはクィーン・ラティファ(Queen Latifah)などといった大物達の演技っぷりのみならず、その歌いっぷりや踊りっぷりも存分に楽しめる何ともゴージャスな映画体験が可能な作品、と述べておきたい。以上。(2008/06/21)