デイヴィッド・クローネンバーグ監督作品 『ヒストリー・オブ・ヴァイオレンス』
原題はA History of Violence。副題に「愛と暴力の対立」なんてことが書いてあったり、ポスターなどの上の方に「本年度アカデミー賞最有力」なんてことが書いてあったりするのだが、どちらも笑える。色々な意味でね。
さてさて、それは措くとして、この作品は結構尊敬している鬼才デイヴィッド・クローネンバーグ(David Cronenberg)が、それなりに有名らしいグラフィック・ノヴェル(どういうものか良く分からないのだが。)を映画化したもの。アメリカのどこかでコーフィ店を経営する妻一人、息子、娘と4人で暮らす一見平凡な中年男( Viggo Mortensen )が、店に押し入った二人組強盗を圧倒的な戦闘能力を発揮して射殺してしまったことから、その過去を巡って物語が動き出す。
何ともありきたりなプロットなのだけれど、それならばそれで、この監督であればそれをこの人にしか作りえない世界の中で展開しなおすことが出来ただろうに、それをせずに何ともありきたりに処理してしまっていて、とても残念だった次第。これなら、別の監督が作っても同じだろう。いっそのこと北野武あたりに作らせたほうが面白いものになったかもしれない、とふと思った。
そうそう、冒頭のソフトボールの場面といい、全体の色づかいといい、銃を用いた殺害シーンといい、タケシ映画を髣髴とさせる部分が多く、その点だけは興味深かった。まあ、それがどうした、と言われればそれまでなのだが…。
ということで、ごくあっさりとした映画なのでこの評論もあっさりと終える。以上。(2006/04/20)