青山七恵著『ひとり日和』河出書房新社、2007.02

第136回芥川賞を受賞した中編。初出は『文藝』2006年秋季号(7月7日発売)で、私が読んだのは『文藝春秋』2007年3月号に収録されている版である。細かい修正は入っているかも知れないが、学術論文ではないので版は余り気にせず以下、簡単な紹介と若干の感想を。
舞台は近年の京王線沿線と都内各地。埼玉県から「上京」してきた20歳の女性=知寿が、線路脇でひとり暮らしをしているやや風変わりな高齢女性=吟子さんと同居させて貰うことになる。知寿は笹塚駅のキオスクでバイトを始めることとなりそこで同年代の彼氏を見つけ、そしてまた吟子さんは高齢男性であるホースケさんと恋愛関係を築いていて、そういう出会いと別れ等々が知寿を成長させていくことに、というようなお話を、春夏秋冬に分けられた4章+αに何ともきちんとまとめ上げている。
様々な人々に取り巻かれていたとしても、人は基本的に孤独、というような意識が最初から終わりまで存在するなかなかに切ないお話で、その点はタイトルに示されている通りである。1年以上という長い期間をコンパクトに、しかも書くべきところはきちんと押さえつつまとめ上げる手腕も見事だし、観察力や細部への拘りにもこの作家の力量をうかがい知ることが出来ると思う。
ただし、「こんなもので良いのか?」という感想を抱いたのも事実で、要するにそもそも「芥川」の名を冠する賞に、ここまでおとなしい、もっと言えば何の目新しさもない作品が選ばれて良いものだろうか、ということを考えたのだった。以上。(2007/03/20)