Terry George監督作品 Hotel Rwanda 2006.08(2004)
例えば2004年度のアカデミー賞において主演男優賞(ドン・チードル Don Cheadle)など主要3部門にノミネートした他、海外ではかなり高い評価を得ていたものの日本国内への配給は諸事情により見送られ、その後主としてネット上のムーヴメントが沸き起こってようやく上映の運びとなったという話はかなり有名。こんなエピソードからはこういう優れた作品に目を向けることが出来なくなってしまった日本の映画配給業界の「惨状」みたいなものもうかがい知れてしまうのだが、それは措いておこう。
映画の舞台は1994年のルワンダ。フツ族とツチ族の長年の対立構造が存在する同国で、民族紛争が吹き荒れた1990年代の世界情勢をトレースするかのように起こったフツ族民兵によるツチ族虐殺という事件を背景に、そんな中で自らはフツ族でありながらツチ族住民1,200人強を、自分が支配人をしているホテルに匿った勇敢かつ人間味あふれる人物の苦悩とその奮闘振りを描く。
ホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)やら、ニック・ノルティ(Nick Nolte)といった大スターがさりげなく出ていることも面白いのだが、主演のドン・チードルの演技が余りにも素晴らしいのと、ある種の狂気に取り付かれたフツ族民兵達や、それに怯えるツチ族市民など、兎に角群集の描き方が大変見事である。『シンドラーのリスト』(Schindler's List)と同じ図式(=「民族浄化の中で抑圧者側のある人物が被抑圧者側の人々を救う」)を持ちながら(あちらも救った人数は1,200人ほどらしい)、その簡潔かつ明快な演出と描写により、映画史の一齣に残る作品になったのではないかと考える次第である。以上。(2006/12/26)