Kathryn Bigelow監督作品 The Hurt Locker 2010.09(2008)
アメリカの映画監督キャスリン・ビグロウ(Kathryn Bigelow)による戦争映画。ヴェネツィア国際映画祭で上映され、第82回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、6部門を制覇。元夫のジェイムズ・キャメロン(James Cameron)と演じた激しい賞レースは記憶に新しいところである。ちなみに、「ハート・ロッカー」とは棺桶のことらしい。
イラク戦争さなかの2004年、バグダッドに駐留するアメリカ軍の爆発物処理班に、殉職した隊員に代わってウィリアム・ジェームズ一等軍曹(ジェレミー・レナー=Jeremy Renner)が派遣されてくる。その、死を全く恐れないかのような爆弾処理振りに、周囲は不安を募らせるが、それとは裏腹にジェームズは淡々と任務を遂行していく、…。というお話。
低予算、とは言え1,500万ドルほどで作られたというこの作品。つい先ごろの出来事を描いているのでドキュメンタリっぽいものなのかな、と勝手に思っていたのだが、実際のところは、息詰まる、というかかなりハラハラドキドキな感じの映画になっている。そうそう、爆弾ものと言えば『恐怖の報酬』なのだけれど、結構あれに近いかも知れない。
さて、実際の戦争のような出来事が「物語」とは程遠いものだ、ということは誰もが認識しているところだと思うのだけれど、近々の出来事の「物語化」に若干ではない違和感を覚えてしまうのは、なかなかに興味深い事柄である。
要するに、物語化とは、結局のところある出来事から選択的に取捨選択を行って情報を整理すること、なのだとすれば、記憶が生々しい、整理途上の出来事について、一面から整理されてしまうことに抵抗や違和感を感じるのはある意味当然なのかも知れない。以上。(2011/01/13)