Christopher Nolan監督作品 『インセプション』
クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)による最新の長編劇映画である。主演にレオナルド・ディカプリオを、あるいはまた脇役としてノーラン映画では2本目の登板となる渡辺謙とマリオン・コティヤール(Marion Cotillard)、あるいは子役からスタートした若い二人、エレン・ペイジ(Ellen Page)とジョセフ・ゴードン=レヴィット(Joseph Gordon-Levitt)らを起用。何とも才能豊かな監督自身の原作・脚本による、空前のスケールと言って良いサスペンス&アクション映画と言っておきたい。
以下概要を。ディカプリオ演じるコブは人の夢の中に入り込むことによってアイディアを盗み出す産業スパイ。渡辺演じるサイトーからアイディアを盗もうとして失敗し、逆にサイトーからライバル会社の跡継ぎ(ノーラン映画の常連キリアン・マーフィ=Cillian Murphyが演じている)の夢に侵入し、その会社を崩壊に導くようなシナリオを植え付けること=インセプションを依頼される。コブの肝煎りで特殊な能力を持つ者達からなるプロジェクト・チームが結成され、いよいよ本番に。果たしてその成否は、というお話。
一見めんどくさそうだけれど実は案外単純なアクション映画、と思うとそういうわけでもなくて、コティヤールが演じるコブの亡き妻モルがたびたび夢に侵入してきてプロジェクトを混乱させたり、といった趣向も面白いし、『メメント』を思い起こさずにはいられない基本コンセプトが素晴らしい、と思う。
まあ、個人的はコブがプロジェクトを立ち上げていくプロセスが最も面白くて、特にペイジが演じるアリアドネとコブの頭脳合戦というか我慢比べみたいなところはやはり最大の見所。ちなみにアリアドネはもちろんあのアリアドネです。
それは兎も角、昔から温めていたアイディアなのか、あるいは何かの拍子にひらめいてしまったのかも知れない夢の階層構造みたいなことをベースにして組み立てられた終盤のアクション・シークエンスというのは、ちょっと疲れるけれどやはりその豪腕ぶりを見せつけており、またしても金字塔的な作品を造ってしまったのだな、という思いを胸に鑑賞を終えたのだった。以上。(2010/08/12)