Todd Phillips監督作品 『Joker: Folie à Deux』
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2019年公開の第1作から5年を経て制作された、「バットマン」シリーズのスピンオフ的作品『Joker』続編。監督は前作に引き続きトッド・フィリップス(Todd Phillips)が務める。ちなみに、一応スピンオフ、ではあるのだけれどそういう次元は遥かに超えてしまっていて、バットマンなんて影も形も出てこないので観ようとしている人は注意が必要。
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前作で描かれた事件から2年後。刑務所に収容され裁判中のジョーカーことアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス=Joaquin Phoenix)は、弁護士の勧めでアーカム・アサイラムで行われている音楽セラピーに参加。そこでリーことハーリーン・クインゼル(レイディ・ガガ=Lady Gaga)と出会い、二人は恋に落ちる。裁判の行方は、そしてまた二人の恋の行く先は、というお話。
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賛否両論は想定内なのだろう。「これ投資回収できるの?、勇気あるな〜」、と思ったが(笑)。基本形は『シカゴ』みたいな法廷劇にしてミュージカル。そして映画全体としてのコンセプトは明らかにフランスのフィルム・ノワールとかヌーヴェル・ヴァーグ(あるいはポスト・ヌーヴェル・ヴァーグ)を意識したもの、になっている。そもそも副題がフランス語だし。タイトルといい全編にわたるおびただしい引用っぷりといい完全にゴダールだし。いやー、やってくれる。(まあ、ああいう難解さとか晦渋さはなくて、とても分かりやすい映画ではある。付け加えるとジョーカーって職業ピエロなんだよな。)
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そういうコンセプトで作られているらしきこともあり、それとは裏腹にガガさんが「これぞエンターテインメント!」(なるほど色んな意味で50周年なんだな、と。)と繰り返し歌い続けていてある意味これがメイン・テーマっぽいんだけど(欲を言えばオリジナル作ってほしかったが…)、本作は全くもってエンターテインメント作品ではない、と、断言したい。
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こういう映画はとても好きなのでどっちかというと「賛」なのだけれど(特に音楽良いよね。良すぎるよね。カーペンターズ!)、楽しい時間とか、わくわくする時間を過ごそうとして鑑賞を始めた人には正直酷かも知れない。それなりに長いし(笑)。これは、観終わって、色々考えたり、人と議論したり、っていう映画なので、そこを取り違えてはいけない、と思う。レッツ・トーク・アバウト・イット!
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余談ながら、アメコミ・オリジナル系でミュージカルってひょっとして史上初?日本には同様な作品として『仮面ライダー響鬼』という快作(怪作?)が存在するが、あれもクオリティや志(こころざし)の高さの割には視聴率や玩具の売り上げが伸びず、年度の途中で方向転換を余儀なくされたのは良く知られた事柄である。以上。(2024/11/01)