Wes Anderson監督作品 The Life Aquatic With Steve Zissou 2005.09(2004)

邦題は『ライフ・アクアティック』。ウェス・アンダーソンという、The Royal Tenenbaums (2001) という映画を作った人がビル・マレイ( Bill Murray )を主役に抜擢して取り組んだどうやらコメディらしい作品。「らしい」というのは、全然コメディになっておらず、要するにこの映画、何を狙ったものなのか全く分からない代物。
ビル・マレイ演じる Steve Zissou という海洋冒険ドキュメンタリ映画作家が、このところの不振続きでなかなか予算が取れず、それでも何とか工面を付けて海に出る、という次第を描いた作品なのだが、だから何なのだ、という感じ。エンターテインメントでは全くないし(要するに面白くない。)、勿論アート系作品でもないし、だからといって特に実験的な作品でもない。
ところで、ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠フランソワ・トゥリュフォウ( François Truffaut )監督にはやはり映画作りについての映画『アメリカの夜』( La Nuit américaine 。1973)という作品があるけれど、基本的にあの映画に近いプロットを持っているこの作品は、あの大変優れた映画と比べれば(比べること自体意味がないかも知れないのだが)狙っているところが全く分からないしょうもないピンボケ作となってしまっている。
という具合で、いかにもボロクソなのだが、良い所も存在しない訳ではない。それはこの映画の音楽で、1960-70年代の音楽を基調とするなかなかに楽しいサウンド・トラック群の中で、例えばデイヴィッド・ボウイ( David Bowie )の名曲をアコースティック・ギター一本で、しかもポルトガル語らしき言語で歌う Seu Jorge という人物の本人出演によるパフォーマンスは実に素晴らしい。公式サイトがあったので見ようとしたのだが(www.seujorge.com)、余りの重さに閉口した次第。下手をするとアナログで繋いでるのかも知れないな、と考えた。以上。(2006/02/01)