周防正行監督作品 『舞妓はレディ』
このところ結構なペースで作品を世に送り出している、基本的には寡作映像作家である周防正行が、『マイ・フェア・レディ』(原作はバーナード・ショーの『ピグマリオン』という戯曲。1956年にブロードウェイ・ミュージカルとなり大ヒット。その後1964年にジョージ・キューカー監督のメガホンで映画化された。)の翻案として作り上げたミュージカル映画である。
舞台は京都。冬のある日、鹿児島弁と津軽弁のバイリンガルである西郷春子(新人の上白石萌音)が、老舗のお茶屋・万寿楽を訪ねてくるところから物語は幕を開ける。舞妓になりたい、と訴える春子だが、万寿楽の女将(富司純子)や芸妓(渡辺えり、草刈民代)・舞妓(田畑智子)らはそれをなかなか良しとはしない。
そんな中、彼女の強くて独特な訛りに興味を覚えた万寿楽常連の言語学者・京野(長谷川博己)は、自らが後見人になるので何とか育ててやってくれないか、という風に話を進める。晴れて仕込み(=見習い)となった春子だが、京都弁と様々な芸事、茶屋の所作法の修業はそれはそれは厳しいもの。春子は晴れて無事舞妓となれるのか、あるいはまた京野とのロマンスの行方は、というお話。
この映画はミュージカルなので、歌と踊りはとても大事。音楽は周防正行監督の従弟にあたる周防義和が担当し、こちらは日本アカデミー賞に輝いた。振り付けはパパイヤ鈴木が担当。こちらも素晴らしいのだがこれについては残念ながらもらえる賞自体が存在しない、かも知れない。
さて、しばらく社会派ドラマに傾斜していた周防監督が、かの偉大な作品『Shall We ダンス?』以来実に18年振りに作り上げた100%エンターテインメント志向の映画なのだけれど、さすがに達者というか、巧みというか。笑わせるとことは笑わせ、泣かせるところはしっかり泣かせる、なるほどなところはなるほどと思わせる、その辺の絶妙な作り込みが、やはりこの監督ならではだな、と思われた次第。
なお、上白石萌音が主題歌の中で正しく発音している通り、ladyは「レディ」ではなく「レイディ」である。いっそのこと、タイトルもそうして欲しかった、かな?それを言ったら「ピグマリオン」も「ピグメイリアン」くらいなのだけれど。二重母音は確かに難しい…。以上。(2014/10/15)