Kelly Clarkson My December
アメリカン・アイドル第1回優勝者ケリー・クラークソン(Kelly Clarkson)の第3作目となるオリジナル・フル・アルバム。プロデューサとしてデイヴィッド・カーン(David Kahne)を迎えたこの作品、これまでの2作が余りにも良く出来ていたのと、まだまだ若いからきっと更に成長するはず、ということでかなり期待していたのだが、期待に違わぬ、というより期待を遙かに上回るとんでもないアルバムとなっている。その完成度もさることながら、私のツボであるギター・ロックが冒頭からその基調をなしていて、兎に角カッコ良い。中でも3曲目"HOLE"なんてもう「鬼」としか思えない楽曲なのである。冒頭の先行シングル"NEVER AGAIN"でほんの少し表われているサラ・マクラクラン(Sarah McLachlan)的な歌唱法がより濃厚に出るように思う(ついでに言えば曲調もサラ・マクラクラン的なのである。)、しかもあくまでこの人独自なヴォーカリゼーションが堪能できるバラードの第4曲"SOBER"は絶大な支持を集めそうだし、第7曲以降の、このアルバムの基本的な方向性としてのギター・ロックを基調とすることをしっかりと守りつつの、やや落ち着いた感じのエレクトリックからアコースティックまでをカヴァし、しかも全く散漫ではないヴォーカル・ポップス路線への傾斜具合の絶妙さもさることながら、終盤に至るまでの各楽曲の完成度もとても高い。そういうこともあるのだけれど、まあ、兎に角この人、歌がうまい。しかもどんどんうまくなっていく。基本的にしっかりした芯のある良いアルトなんだけれど、高い音も見事にこなしていて、物凄い訓練をしているのだろうな、と思うわけだ。今までのやや何でもありな感じのアルバムより、こういう方向性(=ギター・ロックを基調とすること)がハッキリした作品の方が良いと思うし、それ以上に繰り返しになるけれどこれは私のツボに見事にハマった次第。ついでながら、殆どの曲でギターを弾いていて、更には大部分の曲を書いていると思われるのはジミー・メッサー(Jimmy Messer)という人なのだけれど、ほぼ無名とは言え大変な才能の持ち主だと思う。以上。(2007/07/23)