U2 NO LINE ON THE HORIZON
アイルランド共和国が生んだ世界屈指のバンドU2による約5年振り12枚目の新作。取り敢えずはキャリア30年にして、この若々しさ、瑞々しさは何なのだろう、という感想を抱いた。恐れ入りました。それは兎も角、このアルバムには恐らく、4人の固定メンバの衰えることのない創作意欲と能力、そしてまた決して枯れることのないロック魂に、これまでこのバンドと数々の名曲・名盤を創り出してきたブライアン・イーノ(Brian Eno)、ダニエル・ラノワ(Daniel Lanoi)、スティーヴ・リリィホワイト(Steve Lillywhite)の3名という言わば黄金トリオによる共同プロデュースの力が大きく作用して、楽曲の端々からロック史のようなものの全体を垣間見てしまうような途方もないスケール感と同時に、散漫さからはほど遠い何とも言えないバランス感がもたらされているようにも思われた。要するにこのアルバム、Bonoという類い希なる歌い手をその中心に据えたヴォーカル・アルバムとしては勿論のこと、曲毎の変化変転が何とも凄まじい、そしてまた隅々まで凝りに凝ったアレンジの極上ロック・アルバムとしてもまさに至高のものなのであり、こういう完成度というのは今日において、このバンドとこのプロデューサ陣以外では多分到達不可能なものだろうな、と思うのである。どの曲も素晴らしいのだが、中でも1曲だけ特筆すべきものを挙げるとすれば、やはりタイトル・トラックの"NO LINE ON THE HORIZON"ということになるだろうか。誠に「至上な」、と形容したくなる本当に優れたロック・アルバムである。以上。(2009/04/13)