滝田洋二郎監督作品 『おくりびと』
つい先頃米国アカデミー賞外国語映画部門ノミネートという快挙を成し遂げた作品である。ちなみに日本アカデミー賞ではほぼ全ての部門にノミネートされ、恐らくそのうちのかなりの数を受賞しそうな勢いとクオリティを持つ傑作である、と思う。
以下概略。本木雅弘演じる主人公はプロのチェロ奏者。所属するオーケストラの解散を機に、妻(広末涼子)とともに山形県酒田市にある母が遺した実家で暮らすことに。そこで見つけた新たな仕事は、納棺師というものだった、というお話。死体を扱うということから一般にはやや卑賤視されがちな仕事に対して、就いた本人や妻、あるいは友人・知人達も初めはとまどい、それでも次第にそれを受け入れ、という過程が丁寧に描かれていく。
兎に角、見習い納棺師を演じる本木雅弘と、彼が就職した葬儀社の社長にしてベテラン納棺師役を演じる山崎努の卓越した演技ぶりには目を瞠らされた。特に本木は、チェロ演奏と納棺技術について膨大な時間をかけて猛特訓をしたはずで、その役者根性には本当に頭が下がる。
ちなみに山崎努について言えば、25年ほど前の伊丹十三作品『お葬式』で日本アカデミー賞主演男優賞をとったりしているのだが、それとちょっとダブって見えたのも確かなところ。この辺りは結構笑えるのだが、それは措くとして、葬儀社のもう一人の社員を演じる余貴美子、そしてまた妻役の広末、あるいは幼なじみ役の杉本哲太、その母役の吉行和子、彼女に想いを寄せる男性役の笹野高史等々、日本映画界が誇る演技派達が勢揃い、という感じで、誠に素晴らしい配役だと思う。
勿論、物語の時間が大体秋から翌春という半年間で、その間に色々なことがまとまって起こり過ぎなんじゃない?、という疑問もあるのだが、そこはそれ、である。個人的には、日本のシャマニズム研究のためにかなり長い時間を過ごした庄内平野を舞台にしたこの映画、妙な懐かしさを感じつつ拝見したのであった。あの辺り、久方ぶりに訪れてみようかなどと考えたりしている次第である。以上。(2009/02/14)