Denis Dercourt監督作品 『譜めくりの女』
いかにもミニ・シアター系、といった感じの映画を紹介しておきたい。フランスのドゥニ・デルクールという人が監督した『譜めくりの女』という「何それ…」と思わずにはいられないタイトルの作品。原題もそのまんまで、フランス語だとLa Tourneuse De Pages、となる。
タイトルの通りの音楽を主要なモティーフとして扱った作品なのだけれど、このデルクール監督、実は音楽家なのであって、ヴィオラ奏者にしてストラスブール国立音楽院の教授もしている模様。1964年生まれだから、相当優秀なんじゃないかと思ってしまう。
さてさて、セザール賞3部門ノミネートとなったこの作品、中身はと言えば基本的に復讐劇である。主人公であるメラニー(デボラ・フランソワ=Déborah François)は子供の頃に受けたピアノのオーディションで、ある有名なピアニストである審査員の一人=アリアーヌ(カトリーヌ・フロ=Catherine Frot)の無神経な行為のせいで不合格となり、ピアニストになることを断念する。時は過ぎ、大人になったメラニーは何の巡り合わせかあるいは意図的なものかは不明なのだがアリアーヌの譜めくり役に抜擢されることになり…、というお話。
スッキリし過ぎな展開、呆気ない幕切れに物足りなさは感じたものの、演出や画面構成、あるいは音楽等々の扱いなどの全てにおいて神経の行き届いた、確かに質の高い作品ではある。また、若さと健康美をアリアーヌに見せつけつつ、淡々と、かつまた着々と復讐計画を進めていく、メラニーという少女と言って良いくらいの年齢に設定されていると思われる女性の人物造形はなかなかに面白い。必ずしも音楽映画とは言えないのだけれど、それでもなお監督自身が演奏家であるところから滲み出てくる、演奏家の苦労、みたいなものがひしひしと伝わってきて、アマチュアながら結構人前で歌ったりすることが多い私にも同調出来るところの多い作品であった。以上。(2008/05/26)