Guillermo Del Toro監督作品 『パンズ・ラビリンス』
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仕事やら2回の公演やらの合間を縫って名古屋で鑑賞。本年度の米国アカデミー賞で、撮影、美術、メイクアップ賞の3部門受賞という快挙を成し遂げたメキシコ・スペイン・アメリカ合作映画である。台詞は全てスペイン語で、原題はEl laberinto del faunoなのだけれど、要するにギリシャ神話的にはパンである牧神がローマ神話的にはファウヌス(Faunus)だということ。ちなみに、監督のギレルモ・デル・トロはメキシコ生まれの基本的にホラーを得意とする映像作家である。
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舞台は内戦終結後のスペイン。フランコが主導するファシズム政権による左派人民戦線の残党狩りが続く中、内戦で父を亡くした少女=オフェリアは、母カルメンの再婚相手であるファシズム政権側の軍人ヴィダルが駐留しているとある山村にやってくる。新しい父とその部下によるレジスタンスへの苛烈極まりない弾圧という凄まじい現実を目の当たりにしたオフェリアは、ある日のこと妖精に誘われて行った村の片隅でパン=牧神の迷宮への入り口を発見し、パンと出会い、自らの運命を知ることになるのだった。
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さてさて、あとは実際にDVDなりをご覧頂ければよいのだけれど、この映画、全体の印象としては、こぢんまりとまとめすぎたキライがあるように思った次第。要するに、現実とファンタジィの二つがどうも切れていない、というか、ファンタジィ側の演出が余りにも地味なので、両者の対比が今一つ鮮明になっていないのだ。そこがもう少し鮮明になっていれば、例えばそれなりに感動的であるラスト・シーンは「むせび泣きもの」になっていたことだろう。
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もう一つ、現実部分の演出や物語構成にも甘さが存在していて、悪代官的な悪役ヴィダルは人物像として類型的にすぎるし、話の展開もありきたりなもの(『カムイ伝』等々において幾度となく描かれてきたものだ、ということになる。)。そしてまた、それを補うはずのファンタジィ側が上の通りなので、全体としてのダイナミックさというかドラマティックさというようなものがもう一つ足らないということになってしまっていると思うのだ。基本的なアイディアや作品が持つテーマやメッセージ性は素晴らしいのだから、あとは何らかの調味料一つ、あるいはさじ加減で大変な傑作となっていたことだろうけれど、何とも勿体ないところ。
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最後になるけれど、この映画、美術や撮影などはさすがに素晴らしい。個人的にもう一つ面白いと思ったのは音響で、食器などがぶつかる音やらがとても印象に残った次第。恐らく、これはかなり意識的にやっているのだろうけれど、例えば音響の良い映画館だと、かなり立体的に聞こえるのではなかろうかと思う。なお、映画の随所に現われる蠢(うごめ)く虫たちには鳥肌が立つ人もおられるかと思うで、一応注意を促しておきたい。以上。(2007/10/27)