Tom Tykwer監督作品 Perfume : The Story of a Murderer 2007.09(2006)
『ラン・ローラ・ラン』(1998。原題Lola Rennt)や『ヘヴン』(2002。原題)といった傑作を撮ってきたドイツの映画監督トム・ティクヴァ(Tom Tykwer)が、パトリック・シュスキント(Patrick Süskind)のベストセラー小説をもとにして作り上げた超大作である。
常人離れした嗅覚を持つ極貧階級出身の男が、その能力によって調香師となり、究極の香りを求める余り犯してしまう数々の殺人を描く。主役の天才調香師ジャン・バプティスト・グルヌイユ(Jean-Baptiste Grenouille)役にはベン・ウィルショウ(Ben Whishaw)が抜擢され、実に見事な演技をみせている他、ジャンの師匠役としてダスティン・ホフマン(Dustin Hoffman)が出演し、老獪振りを発揮している。
さてさて、この作品、それはそれは素晴らしいなの映画であって、この春先余りにも忙し過ぎて劇場に足を運ぶ暇がなかったのが残念で仕方がないのだけれど、これは基本的に劇場で観るべきもの。画といい音といい、この上ないこと極まりなく、個人的には本年のベスト・ワン作品である。とりわけ、映像化がとても難しいと言うよりはほとんど不可能に近いはずの「香り」というものを絶妙な描写力でうまい具合に表現し得ているところなどは神業としか言いようがない。これ以上やれ、と言われてもそれは出来ないものと思う。
18世紀フランスの都市と農村、あるいは地方都市の町並みや人々の衣装、そしてまた屋内セット、特に、これでもかというくらいにこだわった香水工房の描写などもそれはそれは物凄いもので、誠に驚嘆に値する。そこそこ長い映画なのだけれど、出来れば時間のあるときに中断無しで、心を静めつつじっくりご覧頂きたいと思う。以上。(2007/12/16)