Robert Altman監督作品 A Prairie Home Companion
惜しくも昨年11月20日に亡くなった偉大な映画作家の遺作である。原題はA Prairie Home Companionなのだけれど、これは映画とは違って今でもアメリカで放送されているはずの公開ラジオ番組のタイトル(同映画の公式サイト内にある「制作日誌」に詳しいことが書かれている。)。この映画の原案と脚本を担当し、司会役兼歌い手として登場するガリソン・キーラー(Garrison Keillor)が30年以上にわたって司会をしてきた、とのことなのだけれど、本作品におけるこの人のパフォーマンスは実に素晴らしいものだ。
何ともセンスの良い邦題=『今宵、フィッツジェラルド劇場で』にある「フィッツジェラルド劇場」というのがこの映画における公開放送の舞台として設定されていて、これが閉鎖されるのと同時に番組も終了することが決定し、その最後の放送の模様をアルトマン(Altman)監督のお家芸である群像劇のスタイルで描いていく。まあ、こういう話だとどう作っても流れている番組が中心になってしまうわけで、やや焦点が定まった形の群像劇、というような構成になっている。
出演も豪華なもので、メリル・ストリープ(Meryl Streep)、ウディ・ハレルソン(Woody Harrelson)、ケヴィン・クライン(Kevin Kline)、トミー・リー・ジョーンズ(Tommy Lee Jones)、ジョン・C・ライリー(John C. Reilly)などなど、といった具合。そういう面々の演技と歌(これが凄いのだが…)もさることながら、この映画の白眉は上に書いたキーラーのパフォーマンスと、同じく実際の番組でもレギュラー出演している模様の、今回音楽監督に抜擢されたリチャード・ドヴォルスキー(Richard Dworsky)が担当した「音楽」ということになるだろう。基本的にカントリーばっかりなのだが、余りそういうジャンルに興味を持っていない私でも最後まで全然聞き飽きることはなかった。
スティーヴン・ソダーバーグ(Steven Soderbergh)やポール・トーマス・アンダーソン(Paul Thomas Anderson)といったアルトマンの後継者とも言うべき映画作家が前の世紀の終わりから怒濤のように鮮烈さに満ちた名品を作り出すようになって、いよいよこの人の役目は終わったかな、とも常々考えていたのだが、それでもなおこれから先この名監督の新作を観ることが出来ないのは何とも寂しい、とも思う。「終焉」あるいは「死」というモティーフ群を自分の死期を感じ取ることで意図的に入れたとしか思えない遺作を、お見逃し無きよう。以上。(2007/03/17)