竹本健治著『闇のなかの赤い馬』講談社、2004.01
本作は豪華な装幀で届けられる「講談社ミステリーランド」の一冊として2004年初頭に刊行されたもの。知る人ぞ知る天才作家・竹本健治は兎に角〈寡作〉なわけで、オリジナル長編なんてものはここ5年くらいで実にこの一冊しか出していない。ちなみに、作品リストはこちらの神サイトに出ているので是非ともチェックして欲しい。
さて、この作品は学園もの長編本格ミステリという、竹本作品の中では『緑衣の牙』(光文社文庫で買える?)を若干想起させるもの。ミッション系の高校とおぼしき学校で、神父二人が一名は落雷により、またもう一名はどう考えても不可解な焼死という形で相次いで死亡。それでもって、これらの事件に含まれる幾つかの謎とその他諸々を解明すべく活動する主人公その他の活躍が描かれることになる。
あとがきで竹本自身が「自分は今でも子供であり、いつもの通り読みたいと思うものを書いた」云々、と述べているのだけれど、このシリーズの編集方針として総ルビを施され、一応小学校低学年から読めるような体裁が採られているとは言え、本書はごく普通の竹本作品として鑑賞可能なもの。とある美少年が事件の鍵を握っているのは最初から明らかなのだが、こういう趣向もまた、竹本が得意としてきたものなのである。そんなところで。(2005/11/26)